保有しているだけで受取配当金が増加していくというのは、投資家にとっては夢のような話です。いわゆる連続増配企業を保有しておけば、毎年あたり前のように株主の懐を配当金で温めてくれるのです。
でも、配当が成長するためには企業の利益も成長しなければなりません。
企業の利益の成長こそが、配当成長の源泉です。
まれに、連続増配企業でも一時的な業績不振のために利益を超えた配当金を支払う企業もありますが、基本的には企業が稼いだ利益の中から株主に配当金を支払います。
だから、ただ単に高配当だからという理由だけで投資してはいけないのです。
利益が成長している企業へ投資することが重要
利益が成長している企業とはいっても、(景気敏感株とよばれるような)サイクルのある企業の一時的な利益成長ではなく、生活必需品(FMCG)を取り扱っているような企業の継続性のある利益が理想です。
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外国株でいえば、2017年のFMCG企業のトップ10が下記の10社です。
- ネスレ
- フィリップモリス
- ペプシ
- P&G
- ユニリーバ
- コカコーラ
- ジョンソン&ジョンソン
- JBS
- タイソンフーズ
- ロレアル
JBSは聞きなれない企業ですが、ブラジルの食肉加工企業。
日本企業でいえば花王やライオンなどがFMCG企業になります。
花王やライオンなどの製品は、景気に関わらずに毎日のように消費され続けるので業績が悪化したとしても、景気敏感株のように不況期に赤字を垂れ流したりはしません。
逆に言えば、V字回復のようなことは起こらないということだけど、安定を求める投資家にとっては有難い存在であります。
継続性のある優位性のある企業とは?
日用品などの消費財を扱う分野にある企業は幅の広い堀(競争上の優位性)をもつ企業の割合が高いです。
消費財というのは日常生活に必要不可欠なもので、FMCG企業のトップ10に入るような企業は、永続性のあるブランドがあったり、時代遅れにならない製品があります。
こういった分野には幅の広い堀がある企業の割合が高いのですが、その理由については千年投資の公理に下記のように書いてあります。
ダブルミントガムやコルゲートの練り歯磨きは、宣伝と絶え間ない革新を続けていくために莫大な資本がかかっているからだ。
引用元:千年投資の公理
幅の広い堀があるからといって、未来永劫その堀が機能するわけではないので、定期的に業績をチェックする必要はあります。
配当の成長は、利益の成長に比例することが多い
コルゲートにしても、P&G、ユニリーバも成熟企業であるために、利益の成長もゆっくりです。
利益の成長がゆるやかだということは、配当の成長もゆるやかだということ。
たとえば、コルゲートの場合だと10年平均の配当成長率は年率10%でしたが、直近1年の配当成長率はわずか2.6%しかありません。ただし、コルゲートは自社株買いでも株主還元しています。
P&Gの場合も同様の傾向があって、10年平均の配当成長率は年率7.8%でしたが、直近1年の配当成長率はわずか2%しかありません。
安定性は抜群だけれども、今後も配当成長率は低いだろうと考えられます。
利益の伸びが著しい企業は配当も急成長
保有株でいえば、VISAは利益も配当金の成長も共にすばらしいです。
5年間の配当成長は年率23.1%です。これだけ配当金が伸びていっても配当性向はわずか24%しかありません。
売上高も利益も毎年成長し、配当金も業績に伴って増加する。まさに成長企業ですよね。
参入障壁があり、幅広い堀に守られているので、キャピタルゲインもインカムゲインも同時に狙っていける企業で、株式投資の醍醐味といえるでしょう。
ただ、投資家からは高く評価されているので、なかなか買い増しする機会もありません。
まとめ
高配当の株式は受取配当金を増やしたい投資家にとっては非常に魅力的です。
最近でいえば、AT&Tは直近の決算発表で売り上げも利益もともに予想を下回ったことで急落してしまい、配当利回りも6%近くあります。
配当利回りだけで考えると魅力的ですよね?
でも、AT&Tは配当性向が90%を超えているし、5年の配当成長は年率換算でわずか2.2%しかありません。
VISAのような業績拡大にともない、配当も成長させていく配当利回りの低い企業に投資するか、AT&Tのような成熟企業で利益拡大もあまり見込めず、配当成長もあまり期待できない高配当株に投資するのと、どちらが好みでしょうか?
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将来的に受取配当金を増加させたいのであれば、利益とともに配当も成長するであろうと期待できる企業に重点的に投資した方がよいのかもしれません。
[最終更新日]: 2020/02/13